ラミマルブログ

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脳卒中後の運転再開 高次脳機能と検査について

こんにちは、ラミマルです。

連日、脳卒中の方の運転再開の流れと仕組みについてお話しています。

 

初日は道路交通法や自動車運転について書きました。

脳卒中後の運転再開への流れや仕組み① - ラミマルブログ

 

2日目は実際に運転再開すると当事者にはどういう責任がかかってくるのか書きました。

脳卒中後の運転再開への流れや仕組み② - ラミマルブログ

 

今日は運転再開には、実際にどういう流れで進んでいくのかを書きたいと思います。

 

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もくじ

 

 

病院での運転までの流れ

脳卒中や交通事故後の脳挫傷などで、回復期病院に入院することになりました。その後どう運転再開まで繋げていくか、実際のところを話していこうと思います。

脳卒中なり脳挫傷になってしまうと、片麻痺高次脳機能障害などさまざまな症状がですます。

どういう症状か詳しく分からない方は、上記記事から気になる症状を検索してください。

そして片麻痺高次脳機能障害が起こると、生活のほとんどに介助を要します。入院の経過の中で、改善が見られ自身で出来ることも増えてくるでしょう。

 

ではどのような状況になれば、運転再開を検討していくのでしょうか?

これに関してはそれぞれの病院の考え方もありますし、絶対これが出来ないと運転が行えないとは言い切れません。しかし一つの基準となるのが、移動様式が自立している日常の生活動作が自立しているということは大事なことになります。

 

まず移動様式が自立しているかとは、どういうことでしょう。移動自立とは歩いたり車いすにて動くことが自分で出来るということです。移動が自立して行えなければ、運転して目的地に着いた後も一人で動き回ることが難しいですし、行動範囲も限られるのではないでしょうか。

 

また日常生活が自立しているとは、どういうことでしょう。これは身の回りのトイレや更衣、移乗が自分で出来るということです。移乗が自立していなければ、車の乗り降りなどに介助が必要になります。また車の移動より、日常生活を自立させることのほうが優先順位は先であるのは一般的だと言えます。

 

なのでうちの病院では一通りの動作が自立して行えることが、車の運転再開の一つの基準となっています。一通りの動作が自立して生活できるということは、高次脳機能障害を含めて、病気の症状を管理できているといえます。

 

手足が十分動かない身体機能面も障害も運転には厄介になりますが、運転での一番の問題点は高次脳機能障害といえます。

 

運転再開への高次脳機能障害

運転を行うということはスピードを出して動いている中で、瞬時に周りの状況を把握判断と共に実行をしていく、かなり高度な技術を求められます。その根幹を担うのが高次脳機能です。

運転には初日に書いたように、認知機能や知的機能が保たれていることが前提条件になります。その上で、注意機能や遂行機能、記憶面、空間認知の機能などが求められます。

その中でも注意機能は特に重要な機能で、注意は持続性、配分性、選択制、転換性に分類され、集中して長時間運転したり、人込みの多い通りでは他方に注意を向け、その注意を他方に切り替えたり、特に気を付けないといけない道では選択的に注意を向けるなど、私たちは当たり前のように行っていますが、注意機能を障害されるとそれらがスムースに行えなくなってしまいます。

 

それらが欠落して車の運転を行うことを想像してみてください。助手席に乗ることにためらいはないですか?また空間認知の機能が障害していれば、走行位置や車間距離、速度や奥行などにエラーが起こることもあります。遂行機能障害では、ハンドルやアクセル、ブレーキ操作にも関係してきますし、感情面にムラがあれば無謀な運転に繋がってしまうかもしれません。

 

運転再開の高次脳検査

上記の項目を検査するには、病院ではいくつかの検査を実施することがよくみられます。知能や記憶を検査する項目としてMMSEという認知機能や知能面を図る検査を行います。またコース立方体テストなどでIQを図るものや、記憶の簡易検査ではReyの複雑図形検査行ったりします。

注意機能面では、CATやTMTという検査を実施します。

 

 

 ドライビングシュミレーター

Honda | 安全運転教育用「ドライビングシミュレーター」をマイナーモデルチェンジし発売

ドライビングシミュレーター|Hondaの交通安全|Honda公式サイト

 

机上検査だけで、車の運転の判断を行うことは難しいためドライビングシュミレーターなども実施したりします。しかしどの病院にも準備できるものではないため、実施できるところは限られるかもしれません。ゲームみたいな感覚になりますが、ハンドル操作やアクセル、ブレーキ操作など一通りの車の運転は体験できます。

このシュミレーターでは、ブレーキの反応速度や注意の転換ハンドル操作や実際の路上に出ての走行などが行えます。そのなかで安全に運転できるか、コンピューターが判断し結果を出してくれます。

 

これらの複合的な検査結果を医者が判断し、意見書を作成して運転免許センター(公安委員会)で運転の可否を判断してもらう流れとなります。

 

まとめ

・運転再開の判断基準として、生活が自立していることが一つの材料となる

・運転には高次脳機能が大きく関わり、検査にて細かく調べる必要がある

・ドライビングシュミレーターは、運転の複合的な判断が行える

 

最後に

3日間通して、運転再開について書いてきました。車を運転することは生活の足として、とても便利なもので車が必要な地域では欠かせないものとなります。だからといって、簡単に乗車できるものではありません。車に乗るということは、生活面や身体機能面、高次脳機能障害など複合的な判断の元、医者や公安の方などと慎重に検討し、事故のないように運転再開に繋げてもらったらと思います。