ラミマルブログ

リハビリの仕事を通して学んできた経験をもとに、病気やリハビリ、健康や日々のことなどを発信中

半側空間無視とは リハビリアプローチ

こんにちは、ラミマルです。

 

昨日は半側空間無視の考え方や検査について書いてきました。

半側空間無視は、片側の空間にあるものを認識できない状態

・日常生活を安全に過ごしたり、自立することの阻害因子となる

 

気になりましたら、合わせて読んでください。


前回、失語について書いていきましたが、失語はコミュニケーションに問題に生じるため問題が目に見えやすいですが、半側空間無視目に見えにくい症状で、一般的にも知識が浸透していないため理解されにくい障害です。

 

今日は半側空間無視のリハビリについて書いていこうと思います。

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もくじ

 

半側空間無視のリハビリについて

半側空間無視の特徴としては、半側に気付けないことや、自分で探せないことが問題となってきます。これらの問題に対して無視を軽減させたり、自分で半側無視に気付けることが大事になってきます。

リハビリを進めていくうえで指標にするものが「脳卒中ガイドライン2015」ですね。もう何度も登場しています。

このガイドラインによりますと、

半側空間無視に対し、視覚探索訓練、無視空間への手がかりの提示などが勧められる(グレードB)。また、プリズムレンズの装着、左耳への冷水刺激、無視空間への眼振の誘発を行う視運動性刺激、無視側への体幹の回旋、左後頸部の筋への振動刺激、以上の治療手技の組み合わせなども勧められる(グレードC1)が、治療の永続的効果、日常生活動作への般化については、十分な科学的根拠はない。

 とされています。

 

 ・視覚探索訓練

左側が認識できない方に対して、「左を見て」と指示を出すだけでは上手くいきません。自分で気づいていないので、治療としては左側の世界を自分で探していかなければなりません。そのために、例えば手で机の角を触らせて、触覚で代償しながら机全体を把握することや、物を置いて触覚に頼り左側の見落としに気付けるような課題設定が必要になります。

 

 これらはお家でのリハビリでも応用できるでしょう。手で届く範囲のテーブルを用意して、テーブルの四方を手でなぞってもらいます。机の広さが認識できれば、積み木やオセロの駒、将棋の駒などあるものを机全体に置きます。まずそれを集める練習をしましょう。

初めは全て取るのに見落としがあるでしょう。その際は、「まだ残っているよ。」、「もっと左を見て。」と声をかけてみてください。また手で机をたどって見落としがないか確認させることも、いい練習になります。これを繰り返すことで、声かけなくても自分で見えない部分の探索が行えるようになれば、効果が出ていると言えます。

 

グレートCの治療もいくつか挙げていきます。

 

 ・プリズムレンズの装着

簡単に説明すると、10°ほど偏ったプリズム眼鏡を利用し、正中や左側に意識を向けてもらいます。そして目標物に対して手を伸ばすことを繰り返し行う運動学習です。これらの訓練では日常生活に繋がる変化もみられたという報告があります。

 

 ・ミラーセラピー

 

鏡をセットした箱の中に両手を突っ込みます。動く側の手を動かし、鏡に映る動く手を見て、動かない手が動いているように脳に錯覚を起こさせる治療法です。脳卒中ガイドラインでもグレードC1とされています。これらの訓練でも、左側の気づきなどに変化があったと報告がありました。

ミラーボックスの箱も既製品を買えば高くなりますが、段ボールと鏡があれば代用できます。そのためお家で作ってやってみるのもいいですね。

 

半側空間無視の方への関わり方

前述したように、左側のものに気付けない状態となっています。その中で生活するには様々な問題が起こります。

食事場面では左側の食事を食べ残したりすることがあります。そのような場合は、右側にお膳を配置し、お膳の全体を把握してもらって食事を実施します。またお椀の位置を入れ替えたりすることで、見落としなく食事を取ってもらいましょう。

右側に配置していたお膳を、少しずつ正中に戻して変化を追い、正中に戻しても右側の手べ残しがなく完食ができていれば改善していると言えます。

 

半側空間無視に身体失認(手足が自分の手足と感じられない状態)も伴えば、麻痺した上下肢は忘れがちとなります。しかし手順を自分の体に覚えこませていくことで、半側空間無視の方でも、起居動作が自分で行えるようになる可能性はあります。

起居動作の方法は、まず右手で左手首を掴み右足を左の足首の下から絡ませます。そして体を右にねじって右側臥位となります。そこから両足をベッドの下に降ろし、上半身の肘と手をつき体を起こしていきます。座れると組んだ足を元のように戻します。

これらを出来るように練習すれば、生活の範囲は少し広がります。

 

最後に

これらの治療や関わりが、半側空間無視の軽減や自身での気づきに繋がっていけば、少しでも生活の変化になると思います。なにか参考になる内容が含まれていれば幸いです。